親子で醸す、小川酵母がつむぐ酒物語。
茨城県・筑波山のふもと。ここに、代々受け継がれてきた酒蔵があります。
「浦里酒造店」は創業1877年(明治10年)、茨城でも歴史ある酒蔵のひとつ。
杜氏を務めるのは、6代目・浦里知可良(うらざとちから)さん。
1991年生まれの若き匠です。
茨城県は関東で一番酒蔵が多い県で、その中でも浦里酒造店は、珍しい“小川酵母”を使って、20種類以上の日本酒を造り続けています。
親子二代、小川酵母に魅せられて
浦里酒造店を語るうえで欠かせない「小川酵母」。
地元・茨城で発見されたこの酵母は、青肉メロンを思わせる穏やかな香りが特徴。
酸が少なく、低温でよく発酵し、きめ細やかな香気を発するのですが、繊細な酵母のため扱いが難しく、丁寧な管理が求められます。
そもそも酵母とは、お酒造りのアルコール発酵に欠かせない大切な存在。
浦里酒造店では、この繊細な小川酵母に気を遣いながら、約1ヶ月もろみと向き合い日本酒が完成します。
もともと小川酵母の魅力に惚れ込んだのは、当時蔵元を継いだ父・浩司さん。
「霧筑波(きりつくば)」というブランド立ち上げ、廃業寸前だった浦里酒造店を立て直しました。
そして、父・浩司さんが愛する"小川酵母"の開発者と同じ「知可良(ちから)」という名を授かったのが、現在6代目の蔵元杜氏・息子の知可良(ちから)さんです。
メロンのような香りを引き立てる麹づくり
現在の浦里酒造店では、小川酵母の魅力を最大限に活かすため、麹づくりにも強いこだわりがあります。
温度を何度もチェックし、手間暇かけて丁寧に育てる「突きはぜ麹」。
このこだわりの麹が、浦里酒造の味を支えています。
「突きはぜ麹」とは、菌糸が米粒の表面に少し生え、かつ内側にしっかり入り込んでいる状態のことで、ゆっくりお米を溶かしていくのが特徴です。
そもそも麹菌とは、アルコール発酵を手助けする役割があり、お酒の香りにも大きく影響を与えます。
小川酵母のメロンのような香りを引き立てるには、この「突きはぜ麹」が欠かせないと語っています。
地元茨城の恵みだけでつくる日本酒
また、浦里酒造店では、酒米・仕込み水・麹菌・酵母、ほぼ100%を茨城県産でまかなっています。
これほどまでに地産地消にこだわる酒蔵は、現代では非常に貴重な存在。
「浦里」や「浦里 純米うすにごり」など、地元の風土と嗜好に寄り添ったお酒が揃っています。
実際に飲んでみると、口いっぱいに広がるメロンやマスカットのような爽やかさ。
甘やかだけどスッと引いていく、そんな軽やかで透明感のある味わいが魅力です。
天才杜氏、知可良(ちから)さんの挑戦
麹管理のために、夜中1時間ごとに起きてチェックする…そんな眠れぬ日々を経て、知可良杜氏は2年目に大きな成果を手にしました。
国内最大の歴史ある杜氏組織の鑑評会でトップの座を勝ち取り、最年少での主席受賞、「霧筑波 大吟醸」での受賞を果たしました。
それでも「満足してはいいものは作れない。」と語る知可良(ちから)杜氏。
酒造り人生で学んだ"向上の一路に終点なし"という言葉を胸に、今も日々精進されています。
常に上を目指し、日々酒造りと向き合い続ける姿は、老若男女たくさんの人々に希望と勇気を与えてくれます。
十彩限定「藍白(あいじろ)」をご紹介
そんな浦里酒造店のクラフツマンシップを応援したいという思いから、今回「藍白(あいじろ)」という日本酒を十彩限定で造り上げました。
No.4 藍白(あいじろ)
浦里酒造店(茨城県) 浦里
蔵元杜氏/浦里 知可良
研ぎ澄まされた純白の「藍白」のように、芯の強さとしなやかさを感じる一本。
芳醇でフルーティーな甘みと、しっかりとしたキレのある飲み口。
小川酵母ならではの、青肉メロンのような香りが鼻にすっと抜けていきます。
代々継いできた歴史を後世にも残したい
そんな想いを胸に、父から子へ、そして未来へと続く、地域に根付いた酒づくり。
便利さや効率だけを追い求める現代の中で、地元の恵みに感謝しながら、真摯にお酒を醸す浦里酒造店の姿は、日本の心や文化をそっと思い出させてくれます。
2025年BS日テレで放送中!
100年以上の歴史を持つ酒蔵で、若き蔵元や杜氏が挑む酒造りの物語。
その真摯な姿と熱い想いを追うドキュメンタリー番組をぜひご覧ください。